ダメ……だよ。
諦めるって、決めて来たはずなのに。
不意に見せられた笑顔に、決心が鈍ってしまいそうになる。
……ううん。あたしの心はもう、グラグラと揺れ動いてしまっていて。
「蜂谷?」
ただ、彼を見つめるあたし。
様子がおかしいと気付かれてしまったのか、声をかけられた……その時だった。
「まーた今日も来てたんだ?」
聞こえた声と一緒に、ズンッと突然、頭が重たくなって。
振り返ってみると、あたしの頭を押さえて後ろに立っていたのは、
「け……」
圭太くん……と、もうひとり。
青いリボンに紺色チェックのスカート。
高坂高校の制服を着た、女の子が立っていた。
「……」
その子とふたりして、目を見開く。
彼女が考えていることは分からない。
だって、あたし達は初対面で。
圭太くんの隣に立つ、この子が誰なのか知らない。
だけど……分かるような気がした。
後ろ姿しか見ていないはずなのに、この子が誰なのか。
たぶん、きっとこの人は……。



