ハチミツみたいな恋じゃなくても。



昨日も通った道を歩きながら、心の準備をする。

これから石丸くんに会う、準備。

それから、これできっぱり彼のことを忘れるという心構え――。


昨日と同じく、色んな人の視線を浴びながら辿りついたグラウンドには、もう既にその人の姿があった。

部長って言っていたっけ。
一番先輩という立ち位置なのに、誰よりも早く来て準備してる。

ボールの入ったカゴを引っ張る、その姿を見てふっと笑みを溢した後、

「石丸くん!」

あたしは彼の名前を、彼に届くように呼んだ。

こっちに目を向けた石丸くんは、当然驚いた顔をする。

でも、すぐに駆け寄って来てくれて……。

「今日も見学?」

今から説明しようと思っていたことを、先に察してくれた。

あたしは「うん」と頷いた後、

「もうちょっと見て来て欲しいって言われたみたいで……。2日続けてとか、さすがにダメだった?」

ほんの少し緊張しながら尋ねた。


ダメって言われたらどうしよう。

また先生に確認とか、面倒なことをさせてしまったら……なんて思っていると、

「ん、大丈夫」

石丸くんは小さく微笑んで、返事してくれた。

その瞬間、ドキッと胸の鼓動が跳ねる。