ハチミツみたいな恋じゃなくても。


***


……何だかんだ言って、ちゃっかり約束してたんじゃん。

心の中でそう呟きながら、呆れたため息を漏らしたのは、高坂高校の校門の前。

そこには昨日と同じ、リョウくんの姿があって、嬉しそうに手を振りながら駆け寄る瞳。

やられた……って思いながらも、瞳を責めることをしなかったのは、どのみち付き合わせてしまうことに変わりはなかったから。


本当だったら、今日はふたりで何処かに出掛ける予定だったのかもしれない。

軽く事情を把握しているリョウくんに、「今日もすみません」と謝った後、瞳に「ありがとう」と小さく伝えた。

すると瞳は、「まぁ、あたしにはプラスにしかならないし?」と、彼にバレないように笑ってくれた。


たまに強引で自分勝手で、うんざりすることもある。

だけどそれでも瞳と友達なのは、それがお互いさまだから。

素直な心の内を話せる存在。
瞳がいなかったらいなかったで、あたしはきっと困る。


「じゃ、行こっか」

リョウくんの言葉に頷いて、あたし達は敷地の中に足を踏み入れた。