***
……何だかんだ言って、ちゃっかり約束してたんじゃん。
心の中でそう呟きながら、呆れたため息を漏らしたのは、高坂高校の校門の前。
そこには昨日と同じ、リョウくんの姿があって、嬉しそうに手を振りながら駆け寄る瞳。
やられた……って思いながらも、瞳を責めることをしなかったのは、どのみち付き合わせてしまうことに変わりはなかったから。
本当だったら、今日はふたりで何処かに出掛ける予定だったのかもしれない。
軽く事情を把握しているリョウくんに、「今日もすみません」と謝った後、瞳に「ありがとう」と小さく伝えた。
すると瞳は、「まぁ、あたしにはプラスにしかならないし?」と、彼にバレないように笑ってくれた。
たまに強引で自分勝手で、うんざりすることもある。
だけどそれでも瞳と友達なのは、それがお互いさまだから。
素直な心の内を話せる存在。
瞳がいなかったらいなかったで、あたしはきっと困る。
「じゃ、行こっか」
リョウくんの言葉に頷いて、あたし達は敷地の中に足を踏み入れた。



