ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「うんうん、いいじゃん。高校生なのも今のうち! 青春を謳歌すべきだと思うよー」

ポンポンと、あたしの肩を2度ほど軽く叩く瞳。

「言っておくけど、彼とどうにかなろうとか思ってるわけじゃないから」

勘違いされてる気がして、あたしは自ら重い口を開いた。すると、「え?」と瞳は首を傾げる。

……やっぱり。

「はぁ」と小さくため息をついてから、言葉を続けた。


「諦めるため、だよ」


中途半端に会ってしまったせいで、石丸くんが頭の中から離れてくれない。

だから、もう一度会いたいと思った。

今度は『諦める』って、心の中で誓って。


「……」

さっきとは打って変わって違う、深妙とも言える面持ちで、あたしを見つめる瞳。

「なに?」

何か言いたげな様子に声をかけるけど、

「まぁ……いいや」

瞳はそのまま椅子に腰を下ろした。そして、

「とりあえず今日は付き合ってあげる。だけど、もしリョウくんと上手くいかなかったら……また合コン付き合ってよね?」

にんまりと、いやらしい笑顔をあたしに向けた。