ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「やめてよ、あたしに付き合ってあげるっていう言い方。素直について来てって言えばいいじゃん」

「っ……」

「会いに行きたいんでしょ?」

見透かされていること、分かってはいたけど。
こうして上から目線で言われると、やっぱりちょっとムカつく。

でも、瞳の言ってることは正しい。


「……ついて来て」

「やんっ、花音ちゃんかわいい〜!」

悔しさとか、恥ずかしさとか押し殺して言うと、瞳は立ち上がってあたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。

もう、何なのこれ……。

こんなことをしなくても、ひとりで行けばいいのかもしれない。だけど、それは昨日出来なくなった。

何故なら、見学の前に現れた顧問の先生に「どうしてうちのサッカー部を?」と聞かれて、焦ったあたし達は咄嗟に瞳の弟が高坂高を志望していて……と、言ってしまったから。

もちろん瞳には弟なんかいなくて。
それは真っ赤なウソ、なんだけど。

そんな少し厄介な経緯があって、瞳が一緒じゃないと行きづらい。

それを瞳は分かっているから、弱みを握っているという感じで、ここぞとばかりに強気。