***
「……瞳」
翌日。1限目の授業が終わった後。
あたしは瞳の席の前に立っていた。
休憩中とか放課後とか、雑談のため近寄って来るのはいつも瞳の方。
なのに、珍しく自分から足を進めて来たあたしを見て、瞳は全てお見通しとばかりにははんと微笑を浮かべる。
何も語らず目だけで訴えてくるその表情、
「めっちゃ嫌な感じなんだけど」
耐えきれず思ったことを口に出すと、「そんなこと言っていいの?」と、にっこり笑顔で返す瞳。
いつもと逆転した立場に、悔しくて「いいよ」って言いたくなる。
でも……。
「あの……さ、今日の放課後は会いに行ったりしないの?」
「誰に?」
「え。えっと、名前なんだったっけ? 昨日の……」
あのカラオケをきっかけに、瞳と仲良くなってた男子。
必死に名前を思い出そうとしていると、「ぷっ」と瞳が吹き出した。