今更もう遅いって、あたしじゃダメなんだって、頭では分かっているけど……。

「っ……」

クッションを抱きしめる力が、ぎゅうっと自然と強くなる。


本当にあたしじゃダメ……なの?


あたしを見たとき、石丸くんはひどく驚いた顔をした。

いるわけのない存在がそこにいたんだから、それは最もな反応なのかもしれない。

だけど、びっくりした……それだけじゃない気がしてる。


『花音がその気になれば、落ちない男なんかいないって!』

『奪っちゃえばいいじゃん!その彼女から!』


……そんなこと、出来るわけないじゃん。

だって、あたしはもう……一度フられているんだから。


3年近く経とうとする今でも、記憶の中から消えてくれない。

『ごめん』と顔を伏せた、石丸くんの姿。


だから、あたしじゃダメだっていうのは、自分が一番よく分かっていた。


それなのに……どうしてだろう。


瞳の言葉と石丸くんの驚いた顔が、頭の中でぐるぐる回って、離れてくれないのは――。