『会えなくて残念だったねー』
高坂高校からの帰り道、瞳が言った。
その言葉を、制服のまま身を投げたベッドの上で思い出す。
誰に……っていうのは、石丸くんの“彼女”。
きっと、マネージャーの中のひとりだと思っていた。
だけど続々とグラウンドに集まる人の中、昨日見た後ろ姿を見つけることは、出来なかった。
「……」
べつに瞳が言ってたみたいに、自分より可愛いかどうか、確かめてやろうと思っていたわけじゃない。
だけど今、すごく心の中がモヤモヤして、嫌な気分なのは……圭太くんのせい。
『残念ながら、蜂谷さんの入り込む隙はもうないよ』
あたしは何にも言っていないのに、そう言って圭太くんは鼻で笑った。
何なの、あの態度……。
圭太くんって、あんなに意地悪な人だった?
ベッドの脇のクッションを抱き枕代わりにして、ゴロンと横に寝がえりを打つ。
久しぶりに石丸くんに会ったあたしの態度は、分かりやすかったのかもしれない。
実際、『まだ好きなんだ?』と言われて、言葉を失ってしまったわけだし。
それでも……
あんな言い方って、ないと思うんだけど。