「花音、お願いっ!」

「……嫌」


目の前で両手をピッタリと合わせ、ギュッと目を閉じる友人。

まるで神様にでも頼むような必死な願いを、あたし蜂谷花音(はちや かのん)は、一瞬で断った。

だって……。


「そこを何とか!一生、一生のお願いだからっ!」

「それ、前も言ってたし」

「っ……」


バツの悪そうな顔をして、口ごもる友人の名は、前原瞳(まえはら ひとみ)。


「もう合コンとか、そーゆーの行かないって、あたしは決めたの」


頬杖をつきながら、やや上の立場で言うと、瞳は恨めしそうにあたしを睨んだ。



放課後の教室。

あたしの前の席に座って、向き合う瞳の本当の席は、少し離れた場所。


「何でよ……3年になる前までは、男取っ替え引っ替えしてたじゃん」

「……」


この子は、本当にあたしに頼む気があるんだろうか。

棘のある言い方に、眉間にシワを寄せながらも、あたしは笑顔を作る。


「だからー、3年生になったからでしょ?」