自分のものじゃない声に、驚いて隣を見た。

言ったのは、圭太くん。


「そ!そんなことっ……」

「なーんて、冗談。久しぶりにサッカーの練習が観たくなったんだってさ」


言ってないって否定する前に、訂正された。


「へー……そうなの?」

「あ、うん……」

「だから、部長のお前に許可取り! 見学してもいいですかー?って」


圭太くんに言われるがまま。
上手い建前なんて考えていなかったから、助かった部分は確かにあった。

でも……。


「別に俺は構わないけど……。じゃあ先生に確認取ってみるわ」

「おう、サンキュー」

「あっ……」


ごめんと謝る暇もなく、背を向ける石丸くん。

伸ばしかけた手を、あたしはグッとこらえて。
圭太くんに目を向けた。


「やっぱりまだ好きなんだ?」


少しバカにするみたいに、微笑を浮かべて言われた言葉。

決定的で図星なその発言に、ドキッとしながらも、ほんの少しホッとする。

圭太くんの思っていたことが、やっと分かった気がして。

だけど、あたしが返事するよりも先に、圭太くんが続けた。


「あいつ、彼女いるよ」