ハチミツみたいな恋じゃなくても。



「あ、ごめん。石丸……だったよね」

「え?」

確かめるかのように言われた名前に、キョトンとする。

何のことだか分からないあたしを置いて、「そうそう!」と返事したのは瞳。

「呼んで来てくれた?」

「いや、俺クラス同じになったことなくてさ。石丸って奴のこと、あんまり知らなくて……。代わりに同じサッカー部の奴呼んでる」


あぁ……ちゃんとまだサッカーやってるんだ……。

なんて、少し嬉しい気持ちになったのは一瞬。

……ん、ちょっと待って。『呼んで来てくれた?』って、一体どういうこと?


「ちょっと瞳、なに勝手なことしてんの!?」

嫌な予感がして、腕を掴んでこっちに向かせる。

「え?勝手なことってなんでしょう?」

「もう、瞳っ!」

頬に人差し指を当て、とぼけようとする瞳。

そうはさせないと、声を荒げたのと同じタイミングだった。


「おーい、中村こっちー」


“リョウくん”と呼ばれていた男子が、誰かに向かって声をかけた。

その瞬間、瞳を咎めるあたしの体の力が抜ける。