ハチミツみたいな恋じゃなくても。


校門の前まではちょこちょこと来ていたけれど、敷地内に入るのは久しぶり。

そして、こんな距離で石丸くんと話すのも、あの日以来で少し緊張する。


「ほんと大変だったな」

「え?」

「事件のこと」

石丸くんの一歩後ろを歩きながら、「あぁ……」と相槌を打つ。


「でもあたしは、圭太くんのおかげで何もなかったから」


確かにとても怖かったけど、圭太くんが守ってくれたおかげで怪我することもなくすんだ。


「そういえば、石丸くんにすごい怒られたって聞いたよ」

「引退試合前に何してんだバカ!」って、それはもう怒鳴られまくったって話を。


「あたしのせいで石丸くん達にも迷惑かけちゃって、ごめんね」


あたしが謝ると、「別にいい蜂谷のせいじゃないじゃん」と、石丸くんは言った。

そして、


「あいつがバカなんだよ。わざわざ自分から刺されにいくとか」


「場所がもうちょっとズレてたら……」と、最悪の展開を考えて話す石丸くんに、あたしはきょとんとした後、小さく笑う。


「……なに?」

「いや、石丸くんって本当に、圭太くんのことが好きなんだなぁって思って」

「……」


立ち止まってあからさまに、嫌な顔をする石丸くん。

その様子に、あたしはふふっと笑った。