「蜂谷」
あたしの名前を呼ぶ声がして、パッと振り返る。
待っていた人のものとは違う。
だけど、聞き覚えのある人の声。
ずっと忘れたくて、忘れられなかった。
その声の主は――。
「石丸くん……」
彼の姿を視界に入れた瞬間、ドキッと鼓動が跳ねた。
同時にきゅっと胸の奥が狭くなるような感情が
押し寄せる。
……懐かしくて、切ない。
「久しぶり」
「久しぶり……」
柔らかく微笑んで言った石丸くんに、あたしも同じ言葉を返す。
いつぶりかと言えば、放課後にダブルデートをした、あの日以来。
「えっと……」
突然のことすぎて、どうしたらいいかわからず言葉を濁すあたしに、
「圭太がさ、ちょっと遅くなるから迎えに行ってくれって。また変な奴に絡まれたら大変だからって」
石丸くんの方から経緯を説明してくれた。
「俺、これから部活あるし、とりあえずこっちで待っててくれる?」
そう聞いてきた石丸くんに、「うん」と頷き、後を追う。



