ハチミツみたいな恋じゃなくても。


ガタンッとそのまま立ち上がると、周りのクラスメート達が「花音!?」と、回答を求める声を上げた。

だけど、


「ごめんね、時間ないから」

「……」


にっこりと笑顔を浮かべて言えば、無言の圧力。


「それじゃあ、バイバイ。……瞳、覚えておきなよ」

笑顔のまま手を振って背を向けると、後ろから「こっわ」と冗談混じりに言った瞳の声が聞こえた。


怖いのはどっちだ。
あんなこと言ってくれちゃって。

今日のところは逃げたけど、明日になればまた、誰かが聞いてくるんだろう。


「はぁ」とため息をつきながら、あたしは足早に校舎の階段を降りた。


そして玄関で靴を履き替え、外に出ようとしたとき。

ヴーヴーと、ポケットのスマホのバイブレーションが短く鳴る。


誰だろうと見てみれば、瞳からのメッセージ。


【今日で終わるといいね。気をつけて行ってらっしゃい】


それから続けて送られてきたのは、ちょっと気持ち悪いクマが手を振っているスタンプ。


……うん? まず、さっきのことを謝ろうか。


心の中で瞳にそうツッコんでから、あたしはフッと笑って、瞳にスタンプをひとつ返した。


あっかんべをしているウサギを。