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「あっ!リョウくーん!」
初めて立つ校門の前で、ぶんぶんと大きく手を振る瞳。
あたしと喋るときとは違う、瞳のワントーン高い声に、『そういうことか……』と、小さくため息をついた。
放課後、授業が終わってすぐ。
腕を引かれるようにして、瞳に連れて来られた先は、高坂高校。
ここへ辿りつくまでは、「花音のためなんだから!」とか、なんとか言っていたけれど……。
「ごめん、待たせた?」
「ううん、全然!」
校舎から向かってきた男子に、にっこりと微笑む瞳は、男を落とすときの猫かぶりモード。
見るからにチャラそうな男子は、昨日の合コンにいたメンバーのひとり。
あたしのため……なんて建て前で、結局はそういうことですか。
キャッキャと“リョウくん”と話す瞳を、後ろから冷めた目で見つめる。
まぁ……何となく予想はしていた。
てゆーか、あたしがついてこなくても、充分良い雰囲気じゃん。
「瞳、悪いけど……」
先に帰らせてもらうわ……って、肩に手をかけて言おうとしたときだった。



