ハチミツみたいな恋じゃなくても。


***


「あっ!リョウくーん!」

初めて立つ校門の前で、ぶんぶんと大きく手を振る瞳。

あたしと喋るときとは違う、瞳のワントーン高い声に、『そういうことか……』と、小さくため息をついた。


放課後、授業が終わってすぐ。
腕を引かれるようにして、瞳に連れて来られた先は、高坂高校。

ここへ辿りつくまでは、「花音のためなんだから!」とか、なんとか言っていたけれど……。


「ごめん、待たせた?」

「ううん、全然!」

校舎から向かってきた男子に、にっこりと微笑む瞳は、男を落とすときの猫かぶりモード。

見るからにチャラそうな男子は、昨日の合コンにいたメンバーのひとり。

あたしのため……なんて建て前で、結局はそういうことですか。

キャッキャと“リョウくん”と話す瞳を、後ろから冷めた目で見つめる。


まぁ……何となく予想はしていた。

てゆーか、あたしがついてこなくても、充分良い雰囲気じゃん。


「瞳、悪いけど……」

先に帰らせてもらうわ……って、肩に手をかけて言おうとしたときだった。