「もういいから……」
静かに呟いて、圭太くんの背中に腕を回す。
すると、
「蜂谷……?」
少し戸惑った様子の圭太くんの声が聞こえて、ちょっと意地悪をしたくなった。
無言で、腕の力をぎゅっと強くした。
密着したのを良いことに、圭太くんの胸に耳を当てればトクントクンと心臓の音が聞こえる。
あたしのことを想ってくれる人の鼓動。
あたたかくて、気持ちいい。
思い出せば、“過去”は辛い。
でも、“今”は悪くない。
圭太くんに恋してる今、嫌いじゃない。
「蜂谷」
「……」
「蜂谷、苦しい」
「えっ!?」
苦しいと言う言葉に反応して、パッと身体を離す……と、逆に圭太くんに引き寄せられて。
すぐ目の前に、圭太くんの顔。
「あんま可愛いことすんなって。我慢出来なくなる」
「え……」
「最後にもう一回、キスさせて」
「っ!?」
次第に近付いて来る唇に、ドッドッド……っと、鼓動が速く、強くなる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう――!!
焦ったあたしは、唇が触れ合う寸前で、
「だめっ!」
圭太くんの口を手のひらで押さえた。
寸止めをくらって、目をパチパチとさせる圭太くん。
うん、ごめん。でも………。
「……最後じゃ、いや」



