ハチミツみたいな恋じゃなくても。


瞳の言うとおり、確かにずっと忘れられなかった。

誰と付き合っていても、どんなにカッコいい人が隣にいても、彼以上に思うことなんて出来なかった。

だから、『それでいいの?』なんて聞かれたら、


「それは……あたしとしては良くない、けど……」


でも、あっちには彼女がいるんだし、今更どうにもならない。

それにあの石丸くんが選んだ人だ。
奪うことなんて、きっと叶わない。

それに、あたしは……。


「あたしは一度……」


出来るなら、思い出したくない過去。

閉ざした引き出しを開けて、ためらいがちにだけど、伝えようとした時だった。


瞳はあたしが言うよりも早く、頬杖を付いていた手を取って。


「今日の放課後、行ってみよ! 高坂高校に行ってみようよ!」


「……へ?」


予想もしなかった提案に、あたしはポカンと口を開けた。