ハチミツみたいな恋じゃなくても。



「……で、そんなに泣き腫らして何があったわけ?」

テレビ前のローテーブルにジュースの入ったグラスを並べ、隣に座った瞳はタオルに包んだ保冷剤を差し出す。

「ありがと」と、短くお礼を言って、あたしは自分の瞼にそれを押し当てた。


ひんやり、気持ちいい。

自分でも腫れぼったく重く感じていた瞼が、すうっと軽くなるような気がする。


こんなになるまで泣いておきながら、「何でもない」じゃ済まされない。


「……両想いだったみたい」

「誰と?」

「石丸くんと……」


あたしはさっきあったこと、聞いたことをゆっくり話し出した。


ずっと片想いだったと思っていた石丸くんと、実は両想いだったこと。

にも関わらずフラれてしまったのは、圭太くんの存在が邪魔をしてたから。


圭太くんさえいなければ、上手くいくはずだった恋……。


あたしは震えそうになる唇で、それこそ真面目に話したつもり。

瞳もうんうんと相槌を打ちながら聞いてくれていた。

……だけど。