「うわっ、前よりもっと酷い顔してる!」

マンションの一室のドアを開けて、驚いた顔をするのは瞳。


「まぁ、とりあえず入りなよ」

「ごめん……」

あたしは言われるがまま靴を脱いで、「お邪魔します」と、家の中に入った。


Tシャツに短パン姿の瞳に通された場所は、リビング。


「晩ご飯は? 何か食べる?」

問いかけてきた瞳に「食欲ない」と告げると、「そっか」と苦笑された。


「じゃあ飲み物は? 何でもいい?」

「うん」

冷蔵庫を開ける瞳に頷いて、あたしはテレビの前に置かれたソファに座らせてもらう。


今までに何度もお邪魔させてもらったことのある、瞳の家。


「お母さんは?」

「あー、今日は夜勤。だから泊まってってもいいよー。明日学校休みだし」

「うん……」

泊まらせてもらうつもりまではなかったけど、少し安心する。


瞳は母子家庭で、お母さんは総合病院の看護師をしている。

夜勤ならつまり、顔を合わせなくても済む。


瞳のお母さんは好きだけど、さすがにこんな顔は見せられない。

最も、自分の親にすら見られたくないから、こうして瞳の家に来たわけで。