「最低っ!」
肩にかけていた鞄を圭太くんにぶつけて、あたしは背を向ける……けど、
腕を掴んで圭太くんが引き止めた。
そしてそのまま校門の壁へと追いやられ、壁についた圭太くんの片腕に、逃げ場を奪われる。
呼吸が触れてしまいそうな近い距離。
「悪かったと思ってる。でも、ああするしかなかったんだよ。誰にも渡したくなかったから、ああするしかなかった」
「やめて……」
そんな目で、そんなこと言わないで。
「蜂谷ならわかるだろ」
「っ、やめてよっ!」
ドンっと圭太くんを突き飛ばして、あたしは走り出した。
確かにわかる。
そこまでしてでも、好きな人を振り向かせたい気持ち。
あたしも同じだったからわかる。
でも、だから――。
「っ、はっ……」
しばらく走ってから足を止めた。
膝に手をついて呼吸を整えようとするけれど、無理。
走っていたときよりも、どんどん苦しくなっていく気がする。



