ハチミツみたいな恋じゃなくても。


***


「ごめん、ちょっと遅くなった!」


圭太くんが校内へと戻ってからどのくらいだろう。

よくわからないけれど、再び現れた彼はあたしの肩をポンっと軽く叩いて言った。


「……蜂谷?」

返事もせず俯いたままのあたしに、圭太くんが問いかける。


「本当……?」

あたしは小さく呟いて、肩にかけた鞄の持ち手を、ぎゅうっと握りしめた。


「何が?」

「……」

「蜂谷?」


さっき聞いたことが、頭の中でずっとぐるぐるしてる。

あたしはゆっくりと顔を上げて、圭太くんを見る。


「石丸くんが、あたしのことを好きだったって本当……?」

「……」

「圭太くんが邪魔してたって、本当?」


さっき男子から聞き出した話。

それは、石丸くんもあたしのことを好きでいてくれたということ。

でも、圭太くんが石丸くんにあたしと上手くいくよう協力を頼んで。

石丸くんはあたしのことを諦めた……と、いう話。