ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「その彼女、可愛かった?」

「は?」

「顔、可愛かったの?」

「……」

思いがけない質問にキョトンとする。

顔……って。


昨日見た光景をふいに思い出してみるけど、浮かぶのは少し大人びた石丸くんの顔と……彼女であろう人の後ろ姿だけ。


「顔までは見えなかったけど……」

あたしがそう返事すると、「じゃあ!」と瞳は声を弾ませた。

そして、


「奪っちゃえばいいじゃん!その彼女から!」


ナイスアイディアとばかりに、両手をパンッと合わせる瞳。

あたしは「は……?」と、眉を寄せる。

だって、意味わかんない。
いきなり『奪っちゃえばいい』なんて。

いぶかしむような目で見つめると、瞳の方こそ「何で?」という顔をして、


「あたしね、花音以上の美少女って、そうなかなかいないと思うの」


言いながら、体を前のめりに近付けた。

それから更に続けた言葉は……


「だから、花音がその気になれば、落ちない男なんかいないって」