ハチミツみたいな恋じゃなくても。


広場に響き渡るくらいの大声で、大西さんは立ち上がって叫んだ。


対するあたしはというと、

「……」

圧倒されてポカンと口を開ける。そして、


「ふっ……ふふっ」


思わず笑い出してしまった。


「……え、あの……蜂谷さん?」

「ふ、ごめっ……」


「笑っちゃって」と謝りながら、まだ止まらない。


大西さんが至って真面目なことはわかってる。

でも……だからこそ……。


「大西さんって、すごく面白い人ね」

「へっ?」

「石丸くんが一緒にいるの、何となくわかる。飽きないだろうなぁ」

「それ……褒めてます?」


耳まで赤くしながら、白い目で問いかける大西さんに、あたしは目尻を拭きながら「もちろん」と、頷いた。


あたしは人を傷付けることでしか、素直になれなかった。

そんなに真っ直ぐではいられなかった。

……だから。


今ならすごくわかる。

石丸くんが大西さんを選んだ理由。
石丸くんが大西さんを好きな理由。


「その様子だと、圭太くんから何も聞いてないんだね」


要件までは教えてないところが、良くも悪くも圭太くんらしいなぁと思った。