ハチミツみたいな恋じゃなくても。


***


「でも、間に合って良かった」


大西さんの助けにより男は走って行ったけど、念のためあたし達は、人通りの多い広場まで移動した。


犬の散歩をする人や、走り回る子どもたち。

目の前に広がる何でもない光景に、心の底からホッとする。


「中村くんが教えてくれたんだ。蜂谷さん、変な人に付け回されてるかもしれないから、気をつけてって」

「……え?」


ひとつだけ空いていたベンチに並んで腰掛けて、大西さんの話に疑問符を返す。

圭太くんが……?


「あれ?蜂谷さんが相談したんじゃ……?」

「ううん、あたしは何も……」


そう答えながら思い出したのは、「最近変なこと起きてない?」と聞いてきた、圭太くんの言葉。

あれはもしかして、こういうことだったの……?

あのときの自転車の人の顔は見ていない……けど、思い返してみれば、今日の男と背丈が似ていたような気もしないでもない。


「そうなんだ……。だったら警察に連絡しといた方がいいかも」

「また会ったら怖いし」と、続ける大西さんに頷く。


しつこいナンパに遭ったことくらいならあるけれど、あんな暴力的なのは初めてだった。

本当に、また目の前に現れたらと考えただけでゾッとする。