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「でも、間に合って良かった」
大西さんの助けにより男は走って行ったけど、念のためあたし達は、人通りの多い広場まで移動した。
犬の散歩をする人や、走り回る子どもたち。
目の前に広がる何でもない光景に、心の底からホッとする。
「中村くんが教えてくれたんだ。蜂谷さん、変な人に付け回されてるかもしれないから、気をつけてって」
「……え?」
ひとつだけ空いていたベンチに並んで腰掛けて、大西さんの話に疑問符を返す。
圭太くんが……?
「あれ?蜂谷さんが相談したんじゃ……?」
「ううん、あたしは何も……」
そう答えながら思い出したのは、「最近変なこと起きてない?」と聞いてきた、圭太くんの言葉。
あれはもしかして、こういうことだったの……?
あのときの自転車の人の顔は見ていない……けど、思い返してみれば、今日の男と背丈が似ていたような気もしないでもない。
「そうなんだ……。だったら警察に連絡しといた方がいいかも」
「また会ったら怖いし」と、続ける大西さんに頷く。
しつこいナンパに遭ったことくらいならあるけれど、あんな暴力的なのは初めてだった。
本当に、また目の前に現れたらと考えただけでゾッとする。



