ハチミツみたいな恋じゃなくても。



「こっちです、お巡りさん!こっち!」


突如響いた声。

見れば、手を振って人を呼ぼうとしてくれていたのは……大西さんだった。


「チッ」

男は舌打ちをして走り出し、掴まれていた手は離される。


その瞬間、あたしの力も抜けて、ヘナヘナとその場に座り込んだ。


「大丈夫!?」

駆け寄って来てくれた大西さんはしゃがんで、あたしの背中に手を伸ばす。


「あの、お巡りさんっていうのは……」

「あっ、あれ、マンガとかでよく見るやつを真似して言ってみたんだけど、意外と本当に効くんだね」


言いながら、へへっと大西さんは笑うけど、その笑顔に胸がズキンと痛んだ。

だって……。


「どうして助けてくれたの……」

あたし、あんなにひどいことを言ったのに。


まだ謝る前で、許されてもいなくて、いい気味だって、そう思われても仕方ない。

なのに……。


「あんなの放っておけるわけないじゃん!何されるかわからなかったよ!?」


大西さんの言う通り、何をされるかわからなかった。

正直すごく怖かった。


「っ、ありがとう……」


小さな声でそう告げたあたしに、大西さんは「うん」と頷いて、微笑んだ。