ハチミツみたいな恋じゃなくても。


20代後半か、30代。

淡白な顔立ちに、よれっとしたTシャツを着た痩せ型の男は、あたしと目が合うとニヤリと笑った。


――気持ち悪い!

ゾクッとして何となく身の危険を感じたあたしは、目を逸らしてベンチから立ち上がる。


大西さんと話することを考えて、公園の中でも人の少ない場所を選んでしまった。

早く他の人もいる所へ行かないと。


逃げるように黙って立ち去ろうとした……だけど、


「待ってよ」

「っ!?」


男はあたしの腕を掴んで引き止めた。


「や、やめて下さい!」

「じゃあ逃げないでよ」


にんまりと笑う顔。

気持ち悪くて腕を振り解こうとするけど、思いのほか力が強くて振り解けない。

……っていうか、痛い。

必要以上の力で掴まれて、痛みで顔が歪む。


「離して!誰かっ!」

「そんな大きな声出しても誰もいないよ」

「っ……」

「ほら」


更に力が強くなって、グイッと腕を引かれる。

無理やり引きずろうとされて、足が一歩前に出てしまった……そのときだった。