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「へぇー。それで声も掛けずに逃げちゃったの?せっかく会えたのに?」
「……」
瞳の言葉に下唇を噛む、朝。
教室の片隅で、向かい合って座った瞳の顔をムッと睨む。
昨日、カラオケボックスを抜け出した後に起こったこと。
突然居なくなったことをグチグチ咎められるのが嫌で、話を逸らさせるため、素直に話した……の、だけど、
やっぱ間違いだった。
頬杖をついてフイッと顔を逸らすと、
「ねぇ、何で逃げちゃったのぉー?」
ゆさゆさと肩を揺らされた。
「だから……彼女と一緒だったって言ってんじゃん!」
ひとりだったら、あたしだって声を掛けてた。
でもっ……。
つい大きくなった声に、キョトンとする瞳。
瞳とは中学は違うけど、好きな人がいたことは話していた。
だから、もっとスムーズに話が進むと……気持ちを理解してくれると、思っていたのに。
「っ……」
そんな顔されたら、何だかこっちのバツが悪くなる。
もういいよ……って、もう一度顔を逸らそうとした時だった。



