ハチミツみたいな恋じゃなくても。


***


「へぇー。それで声も掛けずに逃げちゃったの?せっかく会えたのに?」

「……」


瞳の言葉に下唇を噛む、朝。

教室の片隅で、向かい合って座った瞳の顔をムッと睨む。


昨日、カラオケボックスを抜け出した後に起こったこと。

突然居なくなったことをグチグチ咎められるのが嫌で、話を逸らさせるため、素直に話した……の、だけど、


やっぱ間違いだった。


頬杖をついてフイッと顔を逸らすと、

「ねぇ、何で逃げちゃったのぉー?」

ゆさゆさと肩を揺らされた。


「だから……彼女と一緒だったって言ってんじゃん!」


ひとりだったら、あたしだって声を掛けてた。

でもっ……。


つい大きくなった声に、キョトンとする瞳。

瞳とは中学は違うけど、好きな人がいたことは話していた。

だから、もっとスムーズに話が進むと……気持ちを理解してくれると、思っていたのに。


「っ……」

そんな顔されたら、何だかこっちのバツが悪くなる。

もういいよ……って、もう一度顔を逸らそうとした時だった。