ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「続き?」

「うん、何か言おうとしてたじゃん」


言われてハッと思い出す。

そうだった。
あたし圭太くんに今までの――。


「な、何だったっけ……忘れちゃった」

「は?」

「たぶん大したことじゃないから」


あははと笑って誤魔化した。

だって、改めて考えてみれば恥ずかしすぎる。

それに今までの女性経験を聞くなんて、まるであたしが圭太くんのことを気にしているみたい。


そんなのあり得ないあり得ないと心の中で繰り返して、あたしは歩き出そうとした。

……だけど。


「じゃあさ、俺がひとつ聞いてもいい?」


圭太くんの声があたしの足を止める。


「朝日のこと諦めるって言ったあれって、ほんと?」

「……」


ドクン、と鼓動が強く鳴った。

真っ直ぐあたしを見る圭太くんの表情は、珍しく真剣で。


「本当……だよ」


今度こそ本当に。
本当に石丸くんのことは諦めるって決めた。