冷静を装うとしながらも、顔を上げられない。
あんなに密着しておいて、圭太くんは平気なんだろうか。
確認するように、ちらりと彼を見てみると……あたしを見てはいなかった。
自転車の過ぎ去った先をずっと見ていて。
「蜂谷、最近変なこととか起きてない?」
「え、別に何も……」
「……そっか」
あたしが答えると、やっと視線が降りてきた。
「何もないならいいけどさ、ちょっと気をつけた方がいいかも。蜂谷、顔だけは可愛いから」
「なっ……!顔だけって、何それ!」
にっこりと笑顔で言われた言葉に、さっきまでとは違う意味で顔を赤くする。
どうせ性格はブスですよ。
拗ねたみたいにプイッと顔を逸らせば、圭太くんは小さく笑った。
「あのね……」
顔だけはっていう言葉、そっくりそのままお返ししますけどと、言おうとしたとき、
「それで、さっきの続き……なに?」
あたしよりも少し早く口を開いたのは、圭太くん。



