ハチミツみたいな恋じゃなくても。


そのまま前のめりになって、ボスッと圭太くんの胸に倒れる。

それとほぼ同時。

あたしのすぐ後ろを、自転車がかすめて過ぎ去っていった。


「あっぶね……」

圭太くんの吐き出した声が、すぐ近くで聞こえる。


直接見たわけじゃないけれど、ブレーキをかけることもなく、ものすごいスピードだったんだと思う。

ぶつかっていたらたぶん、軽い怪我ではすまなかった。


危なかった、怖い。
冷静に考えればそう思うけど、それよりも今は――。


トクントクンと微かに聞こえる鼓動。

以前にも嗅いだことのある匂いと温もり。


「っ……」


まるで湯船に浸かりすぎたときみたい。

ドキドキして、クラクラして、思考が上手く回らない。


圭太くん相手に、あたしどうして……。

泣き出してしまいそうな感情に戸惑っていると、


「大丈夫?」

圭太くんに問いかけられ、体は離された。


「う、うん……」

頷きながら、やっと空気を吸い込む。