あたしが『女王蜂』なんて呼ばれていたのを、知っていたのかは分からない。
ましてやそれを気にしていたことなんて、彼が気付いていたとは思えない。
たまたま持っていたのが、はちみつレモンのあめ玉だった。
ただの偶然……そう考えた方が、しっくりくるのに。
あたしには、偶然じゃなかった。
手のひらに乗っけられた手袋が、温かくて。
その上のあめ玉が、胸の奥をキュッと狭くした。
『嫌い? はちみつ』
『う、ううんっ……』
あたしが咄嗟に首を横に振った時、普段あまり笑顔を見せない彼が、
微笑んだような気がした。
良かった……って、言わんばかりに。
中学2年生。
恋をするには、充分な出来事だった。



