ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「……はい」

「え?」

「ほら」

早くと言わんばかりに促す声に、あたしは訳も分からず手を差し出した。

すると、乗せられたのは淡いピンク色の手袋と……


あめ玉がひとつ。



「これ……」

あたしが置いてきた物ではなかった。

もしかしたら、教室にいるあの子達の嫌がらせ?なんて、一瞬考えた。

それは、そのあめ玉がはちみつレモン味だったから。

可愛くデフォルメされた蜂と、レモンが一緒に描かれた、全体的に黄色のパッケージ。


でも、それは嫌がらせなんかじゃなかった。


「嫌い?」

「え?」

「はちみつ」

「う、ううんっ……」


聞かれて、咄嗟に首を横に振った。

深く考える余裕なんてなかった。

すると、


「じゃあ、あげる」


言ったのは石丸くん。


「え?」って、もう一度あたしが声を上げた時、彼はもう背中を向けていた。