ハチミツみたいな恋じゃなくても。



行列が出来るほどのお店のパンケーキはとても美味しくて。

すみれの砂糖漬けは口に入れると、甘さと花の香りが口に広がった。


プレゼントなんてしないと言ったけれど、誕生日ならせめてここは奢る。

そう決めていたのに、いつの間にか圭太くんが先にお会計を済ませてしまっていた。


本当に最初から最後まであたしのため。


どうして……。
圭太くんの行動が全然理解出来ない。

だって……。



「……や、蜂谷?」

名前を呼ばれてハッと顔を上げる。

「蜂谷ん家って、この辺だったっけ?」

「あぁ、うん……もうすぐそこ」

カフェを出て、家まで送ってもらう流れになったのだけど、考えごとをしているうちに着いてしまった。


「今日はありがと。じゃあ……」

家の前。圭太くんは軽く手を振って、背を向けようとする。それを、

「あっ、待って!」

あたしは咄嗟に呼び止めていた。


「ん?」と、少し不思議そうな顔をして、振り返る圭太くん。