ハチミツみたいな恋じゃなくても。



「ま、そんなわけでさ、今日は蜂谷と一緒にいたかったんだよ」

「っ……」

真っ直ぐな圭太くんの言葉に、戸惑わずにはいられない。


あたしと一緒にいたかったから、


「だから、観たくもない映画にしたの……?」

「ん?まぁ、普通に俺の観たい映画とかだったら、蜂谷付き合ってくれそうにないじゃん」

「何それ」


あながち間違ってはいないかもしれないけど、でも……。


「誕生日に蜂谷と一緒にいれてさ、こうして一緒にケーキ食えるだけで嬉しいよ」


そう言って圭太くんは、自分の前に置かれたパンケーキにナイフを入れる。

あたしのとは違って、バターが乗って、メイプルシロップが付いた普通のパンケーキ。


何か、あたしの方が誕生日みたい……。


映画も、パンケーキも、全部あたしのため。

本来なら主役であるはずの自分は、一緒にパンケーキ食べられるだけで嬉しいって……。


「なに、それ……」


あたしは、圭太くんにも聞こえないくらい小さな声で呟いた。