ハチミツみたいな恋じゃなくても。



自分の名前が少しだけ、嫌いになっちゃいそうだった。


――寒いけど、手袋はもういいか。

そう思い直して、扉に預けた背中を離そうとした……その時。


「何してんの?」

あたしに声をかけてきたのは石丸くん。


「あ……ちょっと机に手袋忘れてきちゃって」

何気なしに答えると、彼は不思議そうな顔をした。

それもそのはず。
だったら何で教室に入らないの?って、思うよね。

「あっ、えっとね」

何とか言い直そうとしたけど、それより早く石丸くんは横切って、

ガラガラッと遠慮もない感じで、教室の中へと入って行った。


「え……」

石丸くんのクラスは隣。

なのにどうして……と、驚いたのはあたしだけじゃなかったらしく、さっきまで騒がしかった室内は、静まり返る。


どうしたんだろうと、中を覗き込もうとした瞬間。

タイミング良く、石丸くんは教室から出て来た。

そして……。