ハチミツみたいな恋じゃなくても。



「ホントムカつくんだけど!蜂谷花音!」

「調子乗ってるよねー」


とある日の放課後。

一度部室に向かったものの、机の上に手袋を置いてきたのを思い出して、教室へと戻った。

すると、すっかり人数の少なくなった中で繰り広げられていたのは、あたしの悪口大会。


はぁ……参った。

閉められた引き戸の横に立ち、小さくため息をつく。

……入るに入れないじゃん。


「ぶりっ子しすぎだっつーの!」

「男の前だと態度違うよねー!」

本人が近くにいるとも知らず、エスカレートしていく声。


「あいつ何なの?お姫さまですか」

「違うって、女王蜂さまだって!」


キャハハと広がる笑い声。



――女王蜂。


蜂谷っていう苗字のせいで、影ながらそんなあだ名が付けられていた。

給食でハチミツが出れば、クスクスとこっちを見て笑われたり。


気にしていない……つもりだったけど。

さすがに少しはダメージ受けるっていうか、何か……。