……で、あたしはどうしてこんなことをしているんだろう。
部屋の隅に置いた全身鏡の前。
さっきまで身体にあてていたブラウスとスカートをその場に投げ捨てて、ベッドに腰掛けた。
圭太くんに好きだと言われて、好きにさせると宣言されて。
『とりあえず、デートしよっか』
家の前まで送ってくれた彼は、にっこりと笑顔でそう言った。
弱いところを突かれてしまったというか、自分からは別れにくい状況に陥ってしまったあたし。
圭太くんにデートしようと言われれば、義務感からイエスと返事するしかないのだけど……。
「別に服装なんかどうでもいいじゃん……」
自分自身にツッコむみたいに呟いた。
前みたいにダブルデートで石丸くんがいるならともかく、今回は圭太くんひとりだけ。
別に張り切ってオシャレする理由なんて、どこにもない。
だけど、少しだけそわそわして落ち着かないのはどうしてだろうか……。