「だって……。今まで散々馬鹿にするようなこと言って来たくせに……」
いきなり“好きだ”とか、信じられない。
動揺を隠しきれず俯くと、目の前から聞こえてきたのは「ごめん」という言葉。
……ほら!と思って顔を上げると、
「でも、馬鹿にしてたつもりはないよ。まぁ、回りくどかったとは思うけど」
圭太くんは、ポリポリと首の後ろを掻きながら、少し恥ずかしそうに言った。
なに……それ。じゃあ……。
「あたしのことが好きっていうのは、本気なの……?」
恐る恐る問いかける。
すると、向かい合った圭太くんは何のためらいもなく、すぐに頷いて。
疑惑が確信になった瞬間、きゅっと胸の奥が締めつけられる。
本当……なんだ。
圭太くんは本当にあたしのことを……。
だったら――。
「ごめん、なさい……。あたし、圭太くんの気持ちには……」
応えられないと伝えようとした。
あたしが好きな人は、きっと何があっても変わったりしないから。
……なのに、
「あー……ダメだよ。蜂谷はもう俺の彼女だから」
にっこりと向けられた、爽やかな笑顔。
「……は?」
潮らしく返事しようとしていたのに、思いがけない圭太くんの発言に、あたしはポカンと口を開ける。



