ハチミツみたいな恋じゃなくても。




昨日、『同じ高校に行けば良かった』なんて言ったばかりだけど、今日は違う高校にして良かったと、心の底から思った。

もし同じ学校だったら、嫌でも顔を合わせることになるから。


瞳と話して少し落ち着いたものの、どうしたらいいかとか具体的なところは全く見えてこない。

とりあえずこのまま時間と距離を少し置いて、ゆっくり考えてみようって、そう思っていた。


それなのに――。




「ちょっとちょっと!校門の前にすっごいイケメンがいるらしいよ!」

「え、うそ!?」

放課後。瞳と一緒に下駄箱まで降りると、学年問わず生徒達がざわついていた。

女子校だから、他校の男子が待ってたりすると、あっという間にうわさになる。

それが少しカッコイイ人ならば尚更……なんだけど、


「今日は一段と騒がしいね」

「えっ、えっ!めっちゃ気になるっ!」

いつになく目をキラキラと輝かせる瞳。

全く……。

つい先日痛い目をみたばかりなのに、反省というものを知らないんだろうか。


「花音、早く行ってみよ!」

ローファーに突っ込んだつま先をトントンさせながら手招きする瞳を、あたしは「待ってよ」と、呆れながら追いかける。