ハチミツみたいな恋じゃなくても。


いつもとは打って変わって逆の立場。
軽蔑するような白ーい目を、あたしに向ける瞳。


「心配して損したぁー。花音は結局いいよね」

くわぁーと大きく伸びをしながら、瞳は椅子から立ち上がる。

「何が」と、小さく聞いてみれば、


「そばにいてくれる人がいつもいて」


ニヤニヤと冷やかすみたいに笑いながら、そう言われた。


「なにそれ……」

違う、誰でもいいわけじゃない。
あたしがそばにいて欲しいのは石丸くんだけ。

……そう思うのに、なぜか瞳の言葉を否定することが出来なかった。


「とりあえず、保健室から保冷剤もらってきてあげる」

「その顔、酷すぎるから」と続けられて、あたしはプイッと顔を背けた。


――もう絶対に合コンに付き合ったりしてあげないんだから。

ここぞとばかりに上から目線になられてるのが悔しくて、密かに頬を膨らます。


でも、話を聞いてくれただけでも、胸の奥が少し軽くなったような気がした。

……瞳に『ありがとう』なんて、絶対言ってやんないけど。