ハチミツみたいな恋じゃなくても。


気付くと胸の奥がチクンと痛んだ。

同時に黒い感情が、あたしの心を蝕んでいく。


どうしてこんなに愛されているのが大西さんなのか。

全然可愛くない、普通の女の子なのに……。


フォークを持つ手に、ぎゅうっと力が入る。

と、そこに、


「あ、俺たちも交換する?」

横から声をかけてきたのは圭太くん。


「え、いや……あたし別にチーズケーキ食べたくないし」

咄嗟のことで戸惑いつつも返事した。ところが、

「俺はそれ気になる」

そう言って、圭太くんはあたしのザッハトルテを一口ぶん奪い取った。


「あっ、ちょっと!」

誰も食べていいなんて言ってないし、相手は更に圭太くん。

あたしは反射的に、いつもの調子で声を荒げてしまった。


「お、これ美味い」

そんなこともお構いなしに、満足そうに声をもらす圭太くん。でも、

「……」

あたし達の前に座るふたりはポカンとしていて。


や、やばい。


「……も、もう、勝手に取るのやめてよー」

キャラじゃなかったかもしれないと焦ったあたしは、困ったように笑顔を浮かべ、圭太くんの背中を軽く叩いた。


すると、圭太くんはチラッとあたしを見て……

クスッと笑みを浮かべる。