ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「……」

何やら、石丸くんのタルトをじーっと見つめる大西さん。

「……なに」

石丸くんが声をかけると、

「美味しい……?」

大西さんは目をキラキラさせながら訊ねた。


――言いたいことはもう、その仕草だけで充分分かる。


「ほら」

「わーい!ありがとー!」

石丸くんは呆れたように小さなため息をついた後、タルトの乗ったお皿を大西さんの前に差し出した。

嬉しそうに満面の笑みでタルトを頬張る大西さん。


何て図々しいの……。

そう思いながら石丸くんへと目を向けると、そんな大西さんを見ながらフッと石丸くんは笑った。


「食い過ぎだから」

「えー、いいじゃん」

「いつもそんな食ってんの?」

「いつもは食べてないよ!ほとんど朝日にあげてるし!」


言葉にはトゲがある。でも……

表情には大西さんを想う気持ちが溢れていた。


可愛らしいタルトを選んだのも、きっと大西さんのためだ。

そういえば、ケーキを選ぶとき悩んでいたような気がするし……。