「もしかして結構待たせた?」
あたしの前まで歩いてきて、そう声をかけてくれたのは石丸くん。
「ううん、あたしもさっき来たところ」
にこりと笑顔を浮かべ返事すると、石丸くんは安心したように「そっか」と、相づちを打ってくれた。
それに対して、圭太くんはというと。
「よっ」
「……」
片手を上げて、軽い挨拶。
分かってはいたけど、この前関わらないでと声を張り上げたこととか、全く気にしてない様子にイラっとせずにはいられなくて。
あたしは無言のまま圭太くんから目線を外すと、
「大西さん、こんにちは」
「あっ、こんにちは……」
にっこりと笑顔を浮かべ、石丸くんの隣に立つ彼女に挨拶をした。
「このお店知ってたの?」
「いや、優衣に……えっと、友達に美味しいって聞いたことがあって」
「そうなんだ!あたしも友達に誘われて来たことがあるんだけど、本当にすごく美味しいんだよ」
本当は自ら声なんてかけたくない。
でも、石丸くんに嫌われてしまわぬように、石丸くんのためだけに、必死に大西さんと仲良くしたい女子を演じる。



