ハチミツみたいな恋じゃなくても。



店内入ってすぐ右側の、小さなカフェスペース。

席は大小合わせても4つほどしかなくて、雑誌で紹介されたこともあり、土日のおやつ時なんかはいつもいっぱいなんだって、瞳が言っていた。


……良かった。
今日はまだ空いてる。

2組ほど先客がいたけど、幸い一番大きな4人掛けのテーブルには誰もおらず、あたしはその一番奥に腰掛けた。


「ご注文は皆さんお揃いになられてからにしますか?」

「あ、はい」

お冷と一緒に持ってきてくれたメニュー表。

ショーケースの中のケーキひとつと、珈琲か紅茶のセットが680円で、これにしようかなってぼんやり考えていたとき。


カランカラン。

さっきあたしも鳴らしたドアベルの音。


「あ、このお店知ってる!」

そんな声のした方を見れば、入り口にもはや見慣れた制服の女子生徒が立っていて。

その隣にはやっぱり見慣れた男子がふたり。


「石丸くん!圭太くん!」


あたしは立ち上がって、こっちこっちと手を振った。