……いや、違う。
本当は心当たりがあった。
だから今、あたしは呼吸出来ずにいて――。
ドクンドクンと、大きくなる鼓動。
吐き気さえ覚えそうな緊張の中、目を逸らすことも出来ない。
まさか……。まさか。
じっと見つめていると、彼の体が少し動いた。
その瞬間見えた……横顔。
「っ……」
何でって思った。
だって、こんな偶然なんてある?
顔が目に入った瞬間、“もしかして”は確信に変わった。
最後に会ってから、2年。
だけど一瞬で分かった。
もともと高かった背は更に伸びて、顔も少し大人びているけど、それは紛れもなく“彼”だった。
ど、どうしよう……。
やっと呼吸が許されるけど、胸の鼓動はさっきよりも随分速い。
あたしが会いたいって思ったから……?
だから神様が引き合わせてくれたの?
そう思ったら、足は自然と彼の方へと動いていた。



