「……誰だか……分かりませ……」最後は小さい声で聞きとれなかった。
「悪いけど、君のことなんて知らないっていってるから」
「お前となんて話してない。羽都音、お前だよ。忘れたのかよ薄情なやつだな」
「わ、私?! ええとだからその知らな……」
コーヅは視線だけ後ろの羽都音に流しつつも前にいる男子に気をつけていた。
羽都音は顔をちょこんとコーヅの後ろから出し、目を細めて男子を見ているがなかなかにして思い出せない。
「お前、まじで思い出せないわけ? ほんとに薄情やつだな。俺はしっかり覚えてるのに」
眉間に皺を寄せ、よーく顔を見ると、なんとなく心の奥から昔の記憶が蘇ってきた。
目の下の黒子、笑うと入る口元の皺、子犬のような顔、優しい目。
「強羅?」
「やっとか」

