その声は落ち着いていて、羽都音は怖がりながらもなぜか少なからず落ち着くことができた。
その男子はブレザーを肩にかけ、シャツの腕を肘まで上げ、右手にペットボトルの飲み物を持っていた。
その腕は太く筋肉質で背も高く全体的にがっちりしていて見るからに怖い。
二ノ宮強羅だ。
幼馴染の強羅が目のまえにいるのに、羽都音にこんな知り合いはいないと思い込んでいた。
どんなに考えても出てこない。いや、まったく思い出せないでいた。
クラスメイトにもいないし、他のクラスの友達の顔も思い浮かべたが誰一人思い浮かぶ人はいなかった。
「久しぶりだな羽都音」
強羅はゆっくりとベンチを後ろから回り、でも視線は二人をがっちり捉えていた。
ベンチの背もたれいっぱいに背中をぴったりとつけた羽都音は体を小さくしコーヅの方へ寄った。
コーヅはそんな羽都音を庇うように立ち上がり羽都音の前に立ち強羅と対面した。

