冷凍保存愛


 駅前にはコーヅがいつも通り制服で立っている。

 もうそれもいつものことなので羽都音はなんとも思わなくなっていた。

 駅の前で会い、挨拶をすると道行く人々が羽都音の顔をじろじろと見ながら通り過ぎて行く。


「場所変えようか」


 コーヅは人に見られていることに気付いていない羽都音に笑顔でそう言うとすっと先に前へ出て歩き出した。

 そんなそっけないコーヅに何故か羽都音は悲しい気持ちになったが、これはデートじゃなくて妹さん探しなんだから変な気を持ったらコーヅ君が困るよね。

 と気持ちを切りかえて下を向いていた顔を上へ上げて歩き出した。


 数歩先を歩いていたコーヅはいつの間にか止まって振り返っていて、羽都音を待っていた。

 とびきりの笑みを浮かべて。

 手を差し出すことはなくてもその笑顔で羽都音の心は晴れて行った。