「でしょ? 騙すにはまずは身内からって言うから」 だますという言葉にびっくりした羽都音はおもわずコーヅの目を覗き込んだ。 「騙すの?」 「冗談だよ。ほら、そういう言葉があったでしょ?」 「なんだ、驚かさないでよ」 「ごめんごめん、それじゃ」 いたずらに笑っているコーヅの腕を叩こうとしたとき、廊下で物音がして二人ともそっちを向いた。 階段を駆け上がってくる音。 コーヅは足早に後ろのドアに向かい、教室を出るときに一度振り返り、「放課後ね」と約束の確認をして、そのまま廊下を歩いて行った。