透明な虫かごにはたくさんの虫が押し込まれ、その熱で箱の中はうっすら蒸れていた。
狭い出入口は開いているが、ぎゅうぎゅうに押し込まれ過ぎてなかなか出ることができなかった。
「やだ、何これ、虫?」
「小堺、あいつ何やってんの。ほんと気持ち悪い。気持ち悪すぎ。でも……これも記事にしよう」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ! どうしようこれ。虫とはいえ可哀想だから出してあげたいし、でも怖いし。どうしたらいい?」
長い髪を左肩に流し、手で押さえ、腰をかがめて虫かごの中を覗きこんだ。
道子は目を細め、足で軽く虫かごを蹴ると、羽音をやかましく響かせながら何匹かの虫が出てきて触覚を動かしていた。

